美輪明宏『葵上・卒塔婆小町』

『葵上・卒塔婆小町』

美輪明宏主演・演出・美術、
三島由紀夫作

見てきました。

もともとは能楽作品。

すごかったな〜。
「くさや」を食わされた気分、
とでも言おうか。

ふだんハンバーガー食ってる人が、
「かけそば」まではおいしくても、
「くさや」の美味しさは、
たぶん分からんのではないか。

ふだんいろんな音楽や映画やお芝居を見ていて、

これを言いたくて、
こう演出して、
こうなって、
だからお客さんが感動して、

っていう「しくみ」が見えてくるもんだが、
それがまったくわからず、
むしろ葵上は退屈ですらあった。
一幕目おわって、拍手もパラパラ。

しかし休憩後、卒塔婆小町になって、
美輪さんがそういう
「しくみ」におさまりきらないような、
ものすごく繊細な
人生の正負、人間の感情を
これまたものすごく繊細な手法で、
このお芝居にあらわそうとしていることに、
会場全体が気づき始めたんですね。

それはある意味、
現代の日本人が失った感性であり、
表裏ある人生の、
裏の部分を表現することを、
日本人自体が忌み嫌って
監視カメラを設置したりして
消そうとしてるものだ。

老婆と若い女の二役、
変り身の早さ、華麗さにうなりながら、
最後、観客の拍手に
小さくゆっくり頭を下げる美輪さん扮する老婆姿をみて、
どこがおもしろいのか分からぬまま、
ちょっと涙が出てきて、
おお、そうか、そういうことか、
ってようやく分かったのだった。
スタンディングオベーション。
幕が降りても、拍手鳴り止まず。

もっと早くに分かれよ、と自分に思う。
ぼくもだいぶ味覚が「ハンバーガー化」してたんだな。
「アバター」もたしかに見たし、面白かった。
でも、くさやも食え、って
美輪さんと三島さんに出されたんですよ。

この日は1000人満席で、一ヶ月ほど公演が続く。
この味覚が分かる女子が、
まだこれだけいることがうれしい。
まだまだやってますよ。ぜひ。