スタジオ大人買い。

昨日今日と、とあるリハで上野の東京芸大に行ってます。
人口密度日本一の元早大生から見ると、夏休みかと思うくらい校舎はがらんと広い。
で、その建物内部のほとんどの部屋が歌や楽器練習のための防音室なんですね。いったい何百室あるのだろう。これだったらリハーサル・スタジオを１時間2000円とかで借りる必要もなく、好き放題、ほぼいつでも練習できる。
ところで今年になって「大人買い」という言葉よく聞く。たとえば学生がバイト代をコツコツ貯めて、１着の服を、選びに選んで買う一方で、働く大人が財力にモノをいわせて、買うか迷ったのも全部、５着まとめ買いする、というようなニュアンスか。
で、この「大人買い」をもうちょっと広くとらえると、居酒屋でとりあえず飲みたいもの食べたいものを思いつくまま好きなだけ注文する、とか、車でハンドルにまかせて走りたいだけ走ったら長野についた、だとか、そういうことも、そういえば「大人買い」だな、と思える。子どものときには恐れ多くて行使できなかった欲望を、カネの力であっさり手に入れるわけです。
さらに広げると子どもでも「大人買い」はあって、僕自身、１個30円の「ビックリマン・チョコ」がブームのとき、おまけのカード欲しさにひと箱丸ごと100個、親に買ってもらったことがあります。5個にひとつの天使カードが欲しかっただけで、です。そのとき社会問題になったのが、カードだけとって、チョコを捨てる子が出て来たことです。そう、まさに大人買い。象牙をとるために象を撃ち殺すってことを、子供までやっちゃってたんです。
で、みんなが持ってないカードいっぱい手に入って超ハッピー、ってなると思いきや、なんか空しかったです。ワクワク１個ずつ、悪魔カード要らねー、なんて言って集めてる時のが全然楽しかった。
直感的に思うのは、好きな物をゲットするために、二番手三番手に好きな物まで含めて大量に、という「大人買い」の発想は、悪魔と取引するというのか、おとな的欲望を満たす代わりに、ある種の”ほどよい”バランス感覚を失っていく感じがします。それが何なのか、最近考えてるところです。食べる分の獲物だけ撃って、骨まで大切にするかつての狩猟文化と、食べ残した牛肉を大量に捨ててる現代の違い。「大人買い」の原理の方が、現代では支配的です。
日本の住宅事情からすると、都内にいながら思う存分大きな音で楽器が練習できる環境、というのも欲望のひとつ。それをこうして学費で「大人買い」してる、なんていうと芸大生に怒られそうだけど、”恵まれた”環境にいる子たちより、バイト代を握りしめて1時間2000円のリハーサル・スタジオで練習してる子たちのが、なぜか楽しそうな顔してるぞ、と感じたのでした。コイツら、恵まれやがって！と思ってるんじゃないです。時間貸しスタジオも商売だから、できれば使わない方がいいと思ってる。そうだ、みんな芸大に潜り込め！という話・・・でもなさそうだ。

地下鉄のホーム。今年もあと２ヶ月。