ブラジル映画。

最近観た「バス174」(ジョゼ・パジーリャ監督)。リオデジャネイロで起きたバスジャック事件を記録したブラジル映画。ブラジルのストリート・チルドレンって人間扱いされてなくて、市民からもドブネズミのように疎まれてるんですね。で、町中で殺されたりってこともよくあり、そんなふうに育った青年が起こした事件。バスの中の人質と青年はいったいどうなるんだろう、って、片時も目が離せない娯楽性。でも実際の事件映像と、関係者のインタビューで成り立つ映画ゆえ、これは現実、リアリティの塊。
ところで、知り合いが近頃ブラジルに行ったときの写真がすばらしくて、よく見てる。自然がきれい、音楽にあふれた街角、って感じの写真ばっかり撮る人が多いなか、彼はゴミの山とかモーホのスラムとか何でもない汚い街角もたくさん撮ってて、その視点が面白かったのです。こちらもリアリティ込み。
ブラジルって、むちゃくちゃきれいな自然やカラフルな街並みの一方で、とんでもない貧困や暴力がある。ブラジルの音楽や映画からにじみ出る美も醜も、娯楽作品だとしてもリアリティが根っこになってる。芸術や娯楽がファンタジーでなくリアリティから始まる、ってのは、今日本に欠けている部分で、例えば娯楽なら、受け手を楽しませる一方、それが現実との関わりを持っているべきと思うのです。
ああ楽しかった、また明日からの仕事もこれで我慢できる、でなく、明日からの仕事の見方を変え楽しくするような娯楽。あるいはこの生活、自分に向いてないって気づかせてくれるものだったり。ところがアメリカ式の娯楽は、ハリウッドもディズニー(ランド)も、ほとんどがファンタジー一色で、その「ランド」や「ワールド」を出ると、残るのは快楽への欲望、憧憬だけ。そんな文化、輸入するな。それくらいならブラジルの映画観るべし。9/2からブラジル映画祭@東京日仏学院とのことです。


2 Comments

  • 23 2005年8月22日 at 1:15 AM

    ハリウッドといえば、レイ・チャールズの映画観た?あれは面白かったな、映像はいかにもで疲れるけど。

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  • ながお 2005年8月15日 at 9:10 PM

    確かにね。ネガティヴな表現もポジティヴな表現もあまりにも嘘っぽいよね~。てゆーか、娯楽自体に求められてるものが現実逃避なんでない?とも思うが…。
    ”火は危険だから料理止めなさい”的な過敏な社会では汚いところはまっすぐ見ないよね。

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