美輪明宏音楽会<愛>

渋谷パルコ劇場でした。
新宿三丁目の地下で美輪さんとすれちがって以来の
拝謁である。
とんでもない歌を目の当たりにしたなと。
この人は霊的なことを語るせいか
「シャーマン」と見られがちなのだが、
ぼくが見たところまったく正反対の
「首長(酋長)」的な人だった。
未開社会において
音楽はシャーマンの場合、
村のはずれで
太鼓の音や呪文に囲まれて
トランス状態に入っていき
霊と交信するものだ。
いっぽう首長はまったく逆で、村の真ん中で歌い踊り、
村人を前にして
「ためになるいい話」をする存在である。
美輪さんは常に正気で、
人間の心の本質には「恨み」「闘争心」「狂気」があるんだと、
そういうことを歌った曲を演じ踊りながら、
だから戦争はいけない、人を愛さなきゃいけない、
と「人の道」を説く、まさに「首長の人」であった。
歌へと導くMCが人を惹きつけるのはそういうことだと思う。
この場合、関係ない「おもしろネタ」を話すのがMCではない。
いたずらに「トランス状態」に入りたがっている
歌い手や楽器奏者、そしてそれを「すげぇ」とほめて
我を忘れ踊りたいお客さん。
美輪さんは、お前ら、ちょっと待て、と。
霊ってのはこういうもんで、人間ってのはこうで、
と、道しるべになる「言葉」の数々。
美輪さんは、歌とは言葉である、ってことを教えてくれたのでした。


No Comments

    Leave a Comment