日本人は月見て気分良い。

十五夜の日は神楽坂の赤城神社でDOIS MAPASライブだった。月見シーズンにあわせて曲などいろいろ考えていたが、この日は近年ほとんどないような暴風雨。月見どころではない!にもかかわらず来てくれたお客さんに感謝の意を表すべく、ささやかながら梅花亭の月見まんじゅうをお配りした。
一転、昨日今日はこれぞ名月といった趣。気分の良い今日は、最近の自分の思考の流れを面倒がらずに書くことにしよう。
月を見て味わうことそのものは縄文時代から日本にあったらしいが、月見にまつわる祭事は中国から平安期に輸入されたものだ。宗教、祭り、言葉、仏像、雅楽などなど、日本のちょっと昔を掘り進むと、ほとんどの根っこは中国。このことは僕にとって不快で、というのも西欧化された現代の表層的日本ではない、いにしえの日本文化を知りたいと思って掘っているのに、根っこの根っこは日本じゃなく中国。それもスケールの大きい、かっこいいものに限って。なんだ、がっかりだなあ、おれたちは中国文化圏の末端かと。
そこに来て川端康成のような人は、源氏物語が日本固有の文学の源流だと、おれたちは中国じゃない独自の文化があるんだ、と言うわけです。確かに現代日本文学といえば、日本的繊細・洗練を感じさせてくれる源氏物語的表現に価値を置くのが一つの基準ですらある。でもぼく自身は直感的に、日本文学には行かずに西洋哲学に行ったんです。私小説などとくに、室内的で、シメっぽくて、個人的で、人対人の話ばかり。貴族・上流階級の人間が狭い室内空間で生み出した芸術、これが日本固有の文化か〜、困ったな、嫌いだ、と。もっと野生的で、庶民的で、快活で、人対自然。そういう日本固有文化はないのか?中国との国交を絶って、オタク化したのが日本文化なんていやだ〜、と思っていたところに、
「沖縄文化論―忘れられた日本」
岡本太郎著。「日本は東洋文化圏にはなく、沖縄・山を含む島嶼文化だ」と。中国由来の弥生時代以前、つまり縄文時代に目を向けると、日本文化の古層がかなり見えてくる。それが現代に息づいているのが沖縄だ、ということで、沖縄で見た土着の祭事や文化を手がかりに、日本を掘っています。
「人類最古の哲学―カイエ・ソバージュ〈1〉」
中沢新一著。キリスト教的「神」の存在を生んでしまう西洋哲学に対する、日本的(縄文的)「神」の概念。レヴィ=ストロースの神話理論を基軸に展開。
ここまでは最近流行の日本=縄文思想の流れなのだが、こういった土着の神話的思考を、音や詩にしてポピュラー音楽で表現しているものがあるのかな、と思ってたら、
「Sede Do Peixe」(DVD)
2004年に出た、ミルトン・ナシメントを中心としたミュージシャンの演奏&ドキュメンタリー。「サンバ」とか「ボサノヴァ」とか「サウダージ」とか、そういう音楽現象・感覚のもう一段奥にある、ブラジルの根っこの根っこの話をしています。詳しくはまた書きますが、歌詞の言葉がとっても土着的で深くて、ほとんど文化人類学者のよう。北米でいうところの「ザ・バンド」周辺が見せてくれたものも、同じような深さを持っているように思える。ブラジル音楽もアメリカの黒人音楽も好きで演奏するけれど、だからこそ僕自身が掘り深める音楽は別の所にあるな、と分かってきました。
となると今の時点で気になるのは、島嶼文化的神話をもとにしたメタファーとしての言語のあり方、つまり日本の詩のあり方、リズムのあり方、音楽のあり方、生活のあり方だ。これまでに増して文化や芸術がグローバル化していくにしても、日本の大事な根っこを認識しておかないと、ベートーベンを聞いてビビって、音楽の無粋な西欧化に拍車をかけた「文明開化」の二の舞になってしまう。「開化」してエキゾに染まるのもいやだし、自分を閉ざしてオタク化するのもいやだ!そのために掘るべし、と思ってます。
ヨーロッパでは満月は人の心をかき乱して狂わせるものになってますね。「オラには分かんないなあ、その感じ。むしろ和むよ。」って、堂々と言えるでしょう、という話。だったのか?
さて明日は箱根神社で奉納演武を見る予定。


4 Comments

  • 23 2006年10月10日 at 11:28 AM

    yoshieさん
    満月の山奥にいると、辺りが薄明るくなりますね。
    川内村の山小屋なら、夜は真っ暗だから月明かりももっと明るく見えそうだ。
    都内は電灯が幾分明るすぎました。
    かっちゃん師匠
    月見カレー・・・、coco壱番屋の新メニューみたいな響きです 笑。今週末はスリランカフェスですね、楽しみです♪
    あ〜、もう66歳ですか。あの世ではめちゃくちゃかっこいいオヤジになってますね、絶対。

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  • かっちゃん 2006年10月9日 at 3:30 PM

    そういえば、師匠!
    今日は John Lennonの #66 birthdayですよ!
    いい忘れてました!

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  • かっちゃん 2006年10月9日 at 3:19 PM

    先日の十六夜(いざよい)、妖しい美しさでしたね。
    神秘的な月明かりに浮かぶ蒼白い雲と、深い群青の空。
    月を愛でるDNAを感じてしまいました。
    月を大切にする島嶼文化といいますとスリランカがありますね。ここでは満月の日は祝日、そして世界で一番祝日が多い国でもありますが、日本と違って月を愛でる習慣、表現する語彙は特にありません。
    やはり日本人の感性の中に、この国の源流があるのですね。
    美意識の追求、これは人生のサブテーマだな♪
    月見団子はあっても、現地で月見カレーは見たことありませんから。カレーと月はちと違うよね、なんだか(笑)
    でも、カレー大会しましょうね〜☆

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  • yoshie 2006年10月9日 at 2:18 PM

    興味深く読ませていただきました。
    それにしても、今月の満月は、すごかったです。
    月が、天の真上にきたときには、あおあおと冴えわたり、こわい、とさえ感じました。
    縄文より変わらずある月を見上げるたび、不思議な感動をおぼえます。特に、普段は完全な闇につつまれる山奥などにいると、昼間のように明るい夜は。

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